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中国のインターネットと日系企業の広報 (2005年)

出所: 中日传播网 作者:中日传播网 更新時間: 2009-2-1 0:00:00

中国のインターネットと日系企業の広報 (2005)

 

 

1.急速に成長する中国のインターネット

 

この23年間で中国におけるインターネットの影響力が急速に拡大し、世論や社会動向を大きく左右するメディアの1つに成長している。こうした背景には、以下の3つの要素が挙げられる。

20054月現在、中国のインターネット人口は1億人を突破し、大都市部では、インターネットの使用率が3割を超えている。中国の日刊新聞の発行部数は約8,500万部であり、インターネットの利用人口の規模は、新聞の購読者に匹敵するほど拡大している。

 

 

 

1 インターネット利用人口の増加(万人)  出処::中国インターネット情報センター(CNNIC

 

 

インターネット規模の拡大とともに、その利用者層も、地域、性別、年齢、学歴の分布は多様化し、インターネットがエリート向けのメディアから大衆メディアに変わりつつある。まず、インターネットユーザーの地域分布を見てみると、1999年末の時点では、北京、上海、広東の3つの地域のユーザーだけで、全体の58.5%を占め、ユーザーの大半が沿海の先進地域に集中していた。それに対し、2004年末現在では、内陸部をはじめ、ユーザーの地域分布が大きく分散しはじめ、この3地域のユーザーが占める比率が21.6%まで低下している。

 

 

 

 

北京

上海

天津

河北

山西

内蒙古

1999

36.7%

8.9%

1.8%

0.8%

1.8%

0.6%

0.5%

2004

4.3%

4.7%

2.1%

1.9%

4.1%

2.2%

1.0%

 

吉林

黑龍

浙江

安徽

福建

1999

4.3%

1.5%

1.7%

5.9%

4.5%

1.0%

2.7%

2004

3.4%

1.9%

2.9%

7.0%

5.7%

2.6%

3.5%

 

江西

山東

河南

湖北

湖南

広東

広西

1999

1.1%

5.2%

2.1%

3.3%

3.4%

12.9%

1.3%

2004

1.7%

9.0%

3.2%

4.6%

3.3%

12.6%

3.0%

 

海南

四川

雲南

西藏

西

1999

0.5%

3.0%

0.5%

0.6%

0.0%

2.0%

0.6%

2004

0.5%

5.6%

1.0%

2.2%

0.1%

2.8%

1.3%

 

青海

寧夏

新疆

 

 

 

 

1999

0.1

0.2

0.5

 

 

 

 

2004

0.2%

0.3%

1.3%

 

 

 

 

 

1 インターネットユーザーの地域分布の変化  出所:CNNIC

 

 

次に、ユーザーの性別構成について、1999年の男女比は、ほぼ82だったが、2004年になると、64へと変化している。

 

 

 

2 ユーザーの性別構成の変化

 

 

さらに、年齢について、1999年の調査では、18から30歳の年齢層のユーザーが全体の7割を占め、すなわち大学生が中心であったが、2004年には、この比率は5割まで下がり、ユーザーの分布は、18歳以下の若年層と中年以上の年齢層で拡大している。

 

 

3 ユーザーの性別構成の変化

 

 

また、学歴について、ユーザーの中に占める高校以下の学歴者層の比率は、1999年の2割未満から4割まで上昇した。

 

 

 

4 ユーザーの学歴構成の変化

 

 

 

2.反日とインターネットの役割

 

 

1)対日世論を左右するポータルサイト

 

中国主要なポータルサイトとして、新浪(http://www.sina.com)、捜狐(http://www.sohu.com) 網易 (http://www.163.comつがあるこれらのサイトを通して、情報やニュースを得るユーザーは、4千万人近くに達している。そのうち、新浪ニュースの利用者は2千万人、捜狐は1000万人、網易は600万人ほどである。利用者の規模だけではなく、その情報量も非常に膨大なものである。新浪の場合、1日に発信するニュースの本数は8000本に達し、書き込みをするユーザー数は50万人に上る。

中国では、全国的に広く読まれる全国紙はほとんど存在しない。ポータルサイトがむしろそれに取って代わり、人々の関心課題や世論の動向を大きく左右し、いわゆる「議題設置」の機能を果たしている。

200515月の5カ月間、新浪ニュースセンターの国内ニュースと国際ニュースの上位30本を見てみると、日本関連のニュースは933本に達し、同じ時期の『人民日報』、『環球時報』、『新京報』、『国際先駆導報』4紙の対日報道の合計に相当する。それ以外に、「日米安保」、「歴史認識問題」、「日中関係」、「日韓領土問題」、「教科書問題」、「安保理改革」などのテーマについて17の特集を設け、掲載された記事の本数は1,773本に達する。

新聞などと比べると、インターネットにおける日本関連のニュースは、マイナス要素が強いことがわかる。20051月から5月の新聞8紙の対日報道を新浪ニュースと比較すると、新浪の場合、マイナスニュースの比率が2割以上高くなっている。中国のインターネットポータルサイトの場合、独自の取材権をもたないため、新聞などの伝統メディアのニュースを転載するに過ぎないが、日本報道に関してはマイナスニュースをより重視している傾向が見られる。

一方、同じ新浪の場合、2004年と比べて、2005年に入ってから日本に対する否定的な報道が増えている傾向にある。20048月から11月の4カ月の間に、新浪ニュースサイトが掲載した443本の国内ニュースと国際ニュースを対象に分析した結果、プラス報道は7%で、マイナス報道は45%に達している。新聞と比べて、マイナス報道の比率が倍ほど高くなっている。それに対し、20051月から5月の新浪ニュースにつて、プラス報道の比率はほとんど変わらないものの、マイナス報道は58%を占め、2004年と比べて1割以上増えている。中国国民の対日感情の悪化は、インターネットにおける反日情報の増大と無関係ではないと思われる。

 

 

 

5 新浪ニュースにおける日本関連報道の変化

 

 

 

2)反日デモとインターネットの影響

 

20054月、北京などで相次いで起こった反日デモは、近年に蓄積した中国国民の反日感情の爆発だったが、インターネットという新しい情報手段がなければ、これほど大規模のものにはならず、全国各地に広がることもなかったと考えられる。

反日デモにおけるインターネットの役割については、主に2つがあげられる。1つは、「新浪網」をはじめとする中国三大ネットが日本の常任理事国入りに対する反対署名キャンペーンを展開し、反日運動のきっかけになったことである。

日本の常任理事国入りに対する反対署名は、アメリカにある世界抗日戦争史実保護連合会(sign.sjwar.org)の呼びかけで2005年の228日に始まった。最初は海外を中心に展開され、317日の時点で署名人数が30万人に達したが、思うほど増えなかったため、上海にある反日サイトの918愛国網に協力を求めた。918愛国網は、319日に独自に署名サイト(china918.netqm)を開設すると同時に、新浪などポータルサイトをはじめ、中国の主要オンラインサイトに参加の呼びかけを行った。

 

 

 

6 918愛国網の署名サイト

 

 

新浪は323日から40人のスタッフを動員し、反対署名キャンペーンをはじめた。その後、搜狐と網易も参加し、反対署名キャンペーンがたちまち全国に広がった。この3つのポータルサイトを通して署名した人の数は、27日までに300万人、29日までに1,150万人に達している。一部重複があると指摘されたが、428日の時点で反対署名をした人数は4000万人を超えた。そのうち、新浪のユーザーだけは1300万人を超え、全体の3割を占めている。ここからポータルサイトが強大な動員力を持っていることが伺える。この意味で、新浪などのポータルサイトが先頭に立って積極的に署名運動を推進することがなければ、署名キャンペーンはこれほど大きな事件にはならなかったと思われる。

 

 

 

時間

参加サイト数

署名人数(人)

2005317

1

32

320

2

40

323

14

50

325

250

100

327

250

807

328

286

1600

411

339

3155

420

339

3617

428

339

4166

 

2 署名キャンペーンに参加したサイトと署名人数の推移

 

 

インターネットのもう1つの役割は、反日デモの情報を発信し、デモを組織したことである。中国では、デモなど集団的な異議申し立ての活動は事実上禁止され、また、結社の自由も大幅に制限されているため、通常はデモの組織と実施は不可能に近い。それに対し、インターネットの普及に伴い、チャットルームやインターネット論壇といったオンライン上ではさまざまなコミュニティが形成され、その影響力が拡大している。今回の反日デモの背景には、このようなインターネットで形成されたネットワークの活躍がある。そのなかで、QQ(http://www.qq.com ユーザー1000万人)をはじめとするインスタントメッセンジャーが大きな役割を果たした。

北京反日デモの呼びかけ文書は、最初に「中華抗日聯盟会」のメンバーと自称する人が、「老毒」というネットネームでインターネットの掲示板(BBS)で発信し、また、QQMSNなど インスタントメッセンジャーやSMS(携帯電話のショートメッセージサービス)を通して急速に広がった。当日のデモ参加者の大半は、このような方法で情報を得たのである。

16日の上海反日デモの呼びかけ文書は、ある会社員がインターネットで発信したものである。この文書では、16日午前9時に上海市の「人民広場」と「外灘人民英雄紀念碑」にそれぞれ集合し、総領事館に向かうことを呼びかけている。参加者に対しては、総領事館に投げ入れるためのトマトと卵を持参するほか、燃やすための日の丸と小泉首相の塑像を準備するよう煽っている。インターネット掲示板のほか、電子メールとSMSで広く配布された。広州、深センなどで起こった反日デモもほぼ同じ方法で組織されている。 

以上の分析から、中国の反日感情と反日行動の蔓延は、インターネットを抜きには考えられない。一方、インターネットの巨大な影響力は、中国のなかではまだ十分に認知されていない。インターネットポータルサイトなどは、自分自身が巨大なメディアであることの自覚と社会的責任感をあまり持っていない。そして、注目や関心度を集めるため、大衆世論に迎合する情報を発信する傾向が強い。中国政府も同様に、伝統メディアにおける反日情報を規制しながら、インターネットにおける「反日」報道と「反日」言論の氾濫を黙認している。反日デモの発生は、中国政府のインターネットに対する無策と無関係ではない。

 

 

 

3.インターネットと日本企業の危機管理

 

1)インターネット+新聞=「新聞炒作」

 

日本などと比べれば、中国では、インターネットと新聞などの伝統メディアの間に、もっと密接な関係がある。

 まず、新聞に関して、新しく創刊した新聞の多くは取材力が弱いため、インターネットを重要な情報源として、そのなかの話題や情報を数多く取り上げている。また、新聞自身の影響力を拡大させるため、インターネットによる記事の転載にも非常に積極的である。

次に、インターネット側では、ニュースを売り物としてユーザーの関心を集めるオンラインサイトが多いが、大半が取材権を持っていないため、新聞など伝統メディアに依存するしかない。

その結果、新聞もインターネットも、読者あるいはユーザーの注目を集めることに重点を置いているため、その共通のテーマは、いわゆる「新聞炒作」という、センセーショナルな報道や過激なものになりがちである。

この数年間、中国では日系企業をはじめ、外資系企業をめぐる不祥事報道が相次ぎ発生しているが、これは、企業自身の体制と対応の問題のほか、中国のメディア事情の変化と無関係ではない。まずは、消費者意識の高揚で、欠陥品や企業をめぐる不祥事に対する関心が高いため、これらの報道は、発行部数の拡大につなげやすい。次は、排他的民族主義の影響で、外資系企業をめぐる世論が厳しくなり、外資系企業に関する不祥事が大きな関心を集める可能性がある一方、国内企業のように名誉毀損で訴えられる可能性が低いため、中国メディアにとっては格好の報道テーマである。近年の外資系企業をめぐる不祥事報道を見てみると、事実追求型のまじめな報道より、「新聞炒作」型のものが多い。

また、最近の特徴であるが、このような「新聞炒作」は、新聞だけあるいはインターネットだけで完結することは非常に稀で、ほとんどは新聞とインターネットが同時に参加する形である。そのなかで、新聞とインターネットの役割分担について、2種類のパターンに分かれる。

1つは、インターネットが最初の情報発信地で、新聞などの報道を通じて、全国ニュースになるケースである。「トヨタ広告事件」がその代表例である。最初は、インターネット?フォーラムやユーザーからの書き込みだけであったが、北京の地元紙がそれを取り上げ、また、ほかの地方紙がそれを転載して大きな事件に発展したのである。

もう1つは、新聞が最初に報道し、インターネットの転載によって全国事件になるケースである。アサヒビール事件がその典型例である。以下、アサヒビールを代表とする日本製品不買運動関連の報道の経緯を見てみよう。

 

 

2)アサヒビール事件の報道経緯

 

事件の発端は、325日付の『国際先駆導報』が、一面で「アサヒビールが歪曲(わいきょく)歴史教科書に協賛」との見出しで報じた記事である。アサヒビール、三菱重工、日野自動車、いすゞ自動車、味の素などの企業名を列挙し、「新しい歴史教科書をつくる会」に協賛している、と非難した。また、アサヒビールの名誉顧問を務める中条高徳氏が、「つくる会」の会報に「靖国神社を参拝しない政治家に、政治にあたる資格はない」という趣旨の文章を発表したことがやり玉に挙げられた。

 

 

 

7 「国際先駆導報」報道の紙面

 

 

『国際先駆導報』の報道をきっかけに、日本企業に対する批判が高まり、「日本製品不買運動」にまで発展した。その経緯は下記の通りである。

 

 

時間

動き

325

『国際先駆導報』が「アサヒビールが歪曲(わいきょく)歴史教科書に協賛」と報道。

26

吉林(きつりん)省?長春(ちょうしゅん)市を中心に、アサヒビールの不買運動が発生。

28

中国の三大ポータルサイトが一斉にこの問題を取り上げる。

29

『新文化報』が、長春市でアサヒビールの不買運動が広がり始めていると報道。

29

三菱重工は「報道は根拠なし」と中国語版ホームページで声明を発表。

30

遼寧(りょうねい)?瀋陽(しんよう)市で、大手スーパーチェーン「信盟」30の売り場から日本資本による製品のすべてを撤去。

30

アサヒビールは、「つくる会」に「資金などの援助は一切ない」との声明を発表。

31

中国外務省の劉建超?報道官は31日の定例会見で「中日の経済貿易問題の政治化は望まない」と発言。

41

中国連鎖経営(チェーンストア)協会がホームページに載せた提議書で、「歴史教科書改訂を支持している」企業として、アサヒビールなど10社を名指し、日本製品のボイコットを呼びかけた。

44

味の素は中国語ホームページに「味の素は『新しい教科書をつくる会』を支持しておらず、資金も提供していない」とする声明を発表。

 

3 アサヒビール事件の伸展状況

 

 

 

 

 

8 三菱重工の中国語版ホームページでの声明

 

 

 

3)新聞報道の分析

 

今回のアサヒビール事件については、主要新聞12紙が報道した。そのなかで、『国際先駆導報』が325日にこの事件を最初に報道したほか、41日と8日に行った継続報道も広く転載され、最も大きな役割を果たしたことになる。

『国際先駆導報』は、新華社の「参考消息」系列の新聞で、200266日に創刊、毎週金曜日に発行される週刊紙である。発行部数は10万部前後で、大きな影響力を持つ新聞とはいえない。

ほかの新聞と比べ、『国際先駆導報』の場合、日本関連報道のなかで、マイナス報道の比率が最も高く、「反日」を売りにしていることがわかる。

 

 

 

9 200515月の『国際先駆導報』における各種報道の比率

 

 

また、この事件を報道した新聞のほとんどが大衆紙である。内容は下記の通りである。

 

4 主要新聞の関連報道

 

4)インターネットの影響

325、『国際先駆導報』がアサヒビールの問題を取り上げた時点で、その影響はごくわずかだったが、28日、新浪、搜狐、網易の三大ポータルサイトが、この事件を一斉に報道してから、はじめて全国ニュースになった。三大ポータルサイトの介入がなければ、この事件が全国的に広がることはなかったと思われる。今回の事件では、最初の情報源ではないインターネットが、危機を大きく拡大させる決定的役割を果たしたといえる。 

 

 

報道の量を見てみると、新浪が最も多く、次は搜狐で、网易が最も少ない。内容の面では、いずれも新聞の記事を転載することが中心で、あまり差がない。

 

5 ポータルサイトの報道内容と本数

 

 

 

5)報道の影響

20056月に、中国主要6都市で実施した調査では、「アサヒビール事件」を知っていると答えた人は、全体の2割を占めている。そのうち、広州は29%で最も高く、それに対し、沈陽が14%に止まり、最も低い。

 

 

11 都市別「アサヒビール事件」を知る人の比率

 

 

そのうち、これらの報道が「非常に信用できる」と答えた人は3割、「ある程度信用できる」と答えた人が5割、この情報に接した人のなかで、8割の人が信用していることがわかる。

 

 

 

12 報道に対する信用度

 

 

 

 

4.日系企業の危機管理体制?広報体制について

 

以上の分析から日系企業の危機管理体制?広報体制について、3つのことを指摘したい。

1つは、中国市場において企業の不祥事に関する報道が今後ますます増える可能性があり、日頃からの危機管理体制、広報体制をさらに強化する必要がある。日系企業の不祥事については、確かに中国社会で蔓延する反日感情の影響を強く受けているが、その背景には、インターネットの発達、メディアの商業化、消費者意識と民族感情の高揚がある。また、こうした状況は当面続くと思われる。

2つ目は、中国のメディア事情や消費者意識などを研究し、中国に適合した広報戦略と方法を模索することである。政治社会制度、メディア構造、国民性などの違いから、日本的広報戦略と手法は、中国ではそのまま応用できない部分が多い。とくに、歴史問題や民族差物などが絡む場合、無用なトラブルと失敗を避けるため、慎重に対応しなければならない。そのために、中国の人々の考え方や、メディア報道の仕方などを把握し、さらに事例研究などを通して、広報マニュアルを作成する必要があると思う。

3つ目は、日ごろの情報収集と危機の時の情報発信にインターネットを活用することである。企業の不祥事の場合、インターネット?フォーラムでの書き込みがきっかけとなる例が少なくない。また、普通の新聞記事でも、インターネットの転載によって大きな事件に発展する例がしばしばある。日ごろからインターネットからの情報収集を重視し、危機に迅速に対応することが肝要である。また、危機の時に、記者発表会のほか、インターネットを活用しての情報発信を工夫する必要がある。●

 

 

 

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